とある村に、リンゴと呼ばれているゴブリンが居る。
そのゴブリンは誰よりも金を愛し、誰よりもエリクサーを愛するゴブリンなのである。


リンゴは、チーフが他の村に攻める時に出撃要請が無くとも勝手に着いて行き、散らばった金とエリクサーを回収して自分専用の貯蔵庫に保管する。

たまに、チーフが施設を強化したいくてもギリギリ金やエリクサーが足りない時、ゴブリンにエメラルドを渡してお願いをしてくる事がある。
エメラルドを見せられるとリンゴの人格が変わってるんじゃないかって勢いでこう叫ぶ。

「空前絶後のぉォォ~!! 超絶怒涛の強盗野郎!!
金を愛し!金に愛された男!!
金 エリクサー エメラルド!!
全ての金目の生みの親!!
そう、我こそはぁぁぁ!!!
秒間ダメージ52!資源には104ダメージ!今まで取ってきた金は1億ゴールド!!!
金庫の暗証番号114514!!
金庫は今、兵舎に置いてあります!チーフ、今がチャンスです!!
もう一度言います!『114514(いいよ来いよ)』って覚えてくださぁぁーーい!!!
そう、全てをさらけ出した俺は
ゴブリィィィン リィィィィンゴォォォ!!!
イエエエェェェエエイ!!!
ジャスティス!!!」
と。

リンゴの貯蔵庫は特殊なもので作られており、小型だがどんなに詰め込んでも入るように設計されている。
チーフの所有している貯蔵庫よりもずっと高性能な物なのだ。
おまけにチーフとリンゴ以外には見えない魔法がかかっている。

リンゴは気軽に暗証番号を叫ぶセキュリティもくそもないようにみえて、実は貯蔵庫にはリンゴが許可した時以外開ける事ができないようになっている。

どこでそんな物を手に入れたのか。

たまに他のゴブリンが奪いに行こうと兵舎を探しまわったりしているが、そもそも見えないのでどうする事もできない。
爆破しても貯蔵庫だけはきっちり残っている。

そう、彼は誰よりも貪欲で、誰よりもセキュリティがしっかりしているのだ。



ある日、違う村から500匹ものゴブリンが襲ってきた。
リンゴは村を守る気なんて全くないので、村外れでのんびりする。
大体の敵はゴブリンだからと言う理由で見逃すが、そのゴブリン達は違った。

リンゴの特殊な貯蔵庫が目当てなのだ。


「お前が金やエリクサー何十億何百億と他の村から盗み取ってそれを隠し持っている事は知ってるんだぜ?この村をめちゃくちゃにして欲しくなければ、お前の隠し持っている金やエリクサー全部俺に渡せ!」

リンゴは笑った。
馬鹿な野郎共だと貶した。

「そんなに村をめちゃくちゃにしたいのならすればいいんじゃねぇの?俺は知らねー奴に貯蔵庫の場所を明かしたりしねーしな!はっはっは!」

そもそも格が違うんだと言うふうに言ってみせた。
すると、ゴブリン達は怒り狂ってリンゴに襲い掛かろうとしてきた。
リンゴはポケットから旧式ポイズンの呪文を取り出して、ゴブリン達に投げつける。
ポイズンの呪文による毒の霧が舞う。

「なんだこれ…くっ、くせぇええええ!!」
毒によって苦しむゴブリン達。

「お前らはここが足りないんだよ。ここが。」
と、自分の頭を指した。